6 戦神たちの仮宿『扇屋』

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「うん? 辛かったら、まだ横になっていてもいいのよ?」  強くて優しい幾久子さん――私は幾久子さんのような火守(ひも)り姫になりたい。  誰かを助けられるような人でありたいと思う。 「幾久子さん。お願いがあります」  廊下の床に正座をし、手をついて顔を上げる。 「冬雪ちゃん!?」 「私を扇屋(おうぎや)で働かせてください」  私は戦神や火守り姫について学びたい。  あの時、私が幾久子さんくらい戦神について知っていたなら、きっとこんなことにはならなかった。 「私は再会した旦那様を支えられる火守り姫になりたいんです」  志郎さんを――戦神を支える幾久子さんのようになりたいと思った。 「そう……。待つことに決めたのね」 「はい」 「扇屋は戦神だけでなく、戦神を目指す候補生たちが住む下宿屋なの。すごく大変だけど、本当にいいの?」 「昨日は倒れてしまいましたけど、体力には自信があります。それに、家事もひと通り……」 「待った! 冬雪ちゃんが倒れたのは志郎のせいだから! 普通の人間が異界に入ると体に負担がかかるのよ」  幾久子さんはじろりと志郎さんをにらんだ。
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