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「戦神って無駄に顔がいいでしょう? だから、なかなか女性を雇えなくて困っていたのよ」
「幾久子。もしかして嫉妬?」
「シロ、黙りなさいよ」
幾久子さんは圧を放ち、笑顔で志郎さんを黙らせた。
「それじゃあ、昼食にしましょうか。全員、座敷へ集合! 今日はライスカレーとお味噌汁、青菜のおひたしよ」
「私、料理を運びます」
土間にある台所には出来上がった料理が並んでおり、それを広い座敷へ運ぶ。
座敷には長机が並び、人数分の座布団が置いてあった。
縁側の障子戸が開けられ、木枠のガラス窓からは緑が眩しい立派な庭が見えた。
畳の上に日が差して、木の葉の影が揺れている。
高野宮家も立派だったけれど、扇屋も立派なお屋敷といって差し支えない。
――でも、高野宮家と違って、ここはなんだかホッとする。
「どうかした?」
お盆を持ったまま、ぼっーとしていたらしく、慌てて青菜のおひたしを机に置いていった。
「とても立派な家だなと思ってました」
私の後ろから入ってきた志郎さんが答えた。
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