6 戦神たちの仮宿『扇屋』

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「あの日、大尉は珍しくご機嫌で、妻から貝の根付をもらったと自慢されてました」 「貝の根付を……」  貝の根付は、私が旦那様に初めて送った贈り物だった。   旦那様が私の拙い贈り物を喜んでくれていたと知って、胸が苦しくなった。 「嬉しかったんだと思います」 「はい……」  旦那様は私を想ってくれていたのなら、それだけで待つ理由はじゅうぶんすぎるくらいあった。   「私は待ちます。旦那様がお帰りになられる日まで……ずっと」   それが何年、年十年先になろうとも、私の気持ちは変わらない――再会できる日がいつかやってくると、私は信じていた。
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