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萌華さんは私と同じ十六歳。
西洋人形のような華やかさを持ったご令嬢で、お金持ちのご令嬢が入学する女学校に通われている。
着物と教科書を包む布は京友禅。
濡羽色の髪と銘仙の着物を着た地味な私とは正反対だった。
「こんな出来の悪い嫁を蒼也さんがお選びになるなんてねぇ……。十六歳の嫁に高野宮家当主の妻が務まるはずがないのよ」
「お母様、そんなことないわ! お兄様より七歳年下っていうだけよ! 十六歳でも妻は務まるわ。冬雪がノロマでどんくさいだけなの!」
私の旦那様である高野宮蒼也様は、私より七つ年上の二十三歳。
先代当主のお父様が急逝し、高野宮家の当主になられたのは、つい最近のこと。
旦那様は大学を卒業し、家へ戻ってきたばかりだった。
だから、家のことは旦那様よりお義母様と萌華さんのほうが詳しい。
萌華さんは旦那様に片想いしているらしく、私を旦那様と離縁させ、その後、自分が妻になろうと目論んでいた。
高野宮に後妻で入ったお義母様の連れ子が萌華さんで、二人と旦那様の間に血の繋がりはなく、結婚しても問題ない。
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