7 灯される火

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 決まった銀鉱でしか掘れず、見つけるまでに時間がかかった。  提灯に使われるひとつひとつが希少で、簡単に手に入らないものばかりだ。   「さあ、冬雪(ふゆ)ちゃん。火を灯しましょう」  幾久子さんが燐寸(マッチ)を持ってきて渡してくれた。 「ありがとうございます」  高野宮家に嫁いだばかりの頃は、玄関を明るくするためのものだと思っていたけれど、今は違う。    ――火守り姫が灯す火は異界の暗闇を照らす。大切な人が帰ってくるように願いを込めて。 「準備はいいよ」 「高野宮大尉なら、きっと大丈夫だ」 「頼むぞ。ちゃんと人でいてくれよ」  戦神たちはなにが起きてもいいように、扇屋の周りで待機している。  旦那様が記憶を失い、獣となって暴れた時は彼らが抑えるという約束で許可された。  五年――旦那様の姿を確認できた戦神はいなかった。  志郎さんも千璃さんも、少しでも旦那様の痕跡がないか探してくれたけれど、旦那様が行方不明になったことで、十の橋より奥は禁止された。  そのため五年間、旦那様の痕跡はなにひとつ見つけられなかった――不安にならなかったと言えば嘘になる。
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