1 まだ見ぬ私の旦那様

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 二人が旦那様に私の悪口を吹き込んでいるのも知っている。  だから、私は旦那様が会いたいと思うような妻ではない。   離縁されるのも時間の問題――どこにもいくあてのない身の上を考えたら、不安で胸が苦しくなった。 「お義母様。萌華さん。夕食の準備がありますので失礼します」  ここにいれば、ずっと嫌みを言われ続ける。  立ち去る私の背に、追ってくる笑い声はとても楽しそうで、苦しむ私を見て喜んでいるようだった。  薄暗い庭を横切り、台所がある裏の勝手口へ回る。  夕食の準備を任された女中たちが、おしゃべりをしていた。   「旦那様がお屋敷にほとんどいないから、大奥様と萌華さんが好き放題ね」 「もっとお屋敷にいてくれたらいいんだけどねぇ。せっかく奥様をもらったのに、これじゃ祝言どころじゃないね」 「なに言ってんだい。旦那様は帝都の戦神(いくさがみ)だよ!」 「旦那様を支え、高野宮の内向きを仕切るのは奥様の仕事だろうに。こんな気弱な奥様でやっていけるのかねぇ」  私のことを話しているのがわかり、中へ入りづらく、話が終わるのを待った。
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