第3話 教祖

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第3話 教祖

 しばらくして意識を取り戻した。 起き上がるとそこは知らない部屋にいた。 隣には横たわったミモザがいて、急いで体を揺さぶった。 何回か揺らすと彼女は目を覚まし、起き上がった。 「起きたな、裏切り者め」 太く低い声がして、声がした方に目をやる。 そこには黒いローブをまとった者がいた。 それに、見ただけで威圧感が伝わる。 間違いない、この人が教祖、グリジア様だ。  「お前は愚かにも脱走を図った、そうだな?」 怖い…空気があまりにも重い。でもここで命乞いしても死ぬだけ。拷問も嫌だ。 「は、はあ…!はぁ…!」 ミモザが顔を青白くして息が荒い。 これが教祖の圧というのだろうか。 でも私は転生してはじめて会った。恐怖はあるけど腰が抜けるほどではない。  私は立ちあがって決意を話した。 「私は教会にいるより外に出ることを決めました。」 するとグリジアは口元をニヤリとして、 「お前が脱走できるのか?魔力を持たない、シスターにいじめられるお前が?」 調べられてる…!?この教祖、 教会のこと無視してるわけじゃない…! あまりの予想外の事実に足がすくんだ。 ダメだ…やっぱり無茶なことだったんだ‥。  せめて巻き込んだミモザだけでも助けないと…! 「ミモザ…逃げて…」 「え…?シレネ…?何を…?」 逃げても教祖には殺されるかもしれないけど、生き延びてほしい。 私は一度死んだし、また転生出来るかもしれない。 「ミモザ、お願い。私はなんとか生きのびるから…!」 嘘だよ、でも逃げさせるためには仕方ないよね。 そしてミモザは立ちあがった。 そうそのまま、ありがとう…。  しかし、ミモザは私の横に立った。 「…え?ミモザ…?」 ミモザは怯えながらも笑って 「あんたを置いて逃げるわけねぇよ、それにオレは魔力を持っている。炎のな!」 するとミモザは手から炎をまとわせた。 すごい…!これが魔法…! 空気がアレだけど前世オタクの私からしたら生で見られて興奮する! これなら少しは勝てる可能性が…!  しかし、グリジアが手をかざすと黒い霧が私たちを覆ってきて、反射で顔を背けた。 少し経つと霧が晴れてきて、ミモザの方に目をやると、手を持って震えていた。 「魔力が…!魔力が吸い取られた…!」 う、嘘でしょ…? 「底辺の魔力など、俺の敵にならん。諦めな。」  グリジアは指から黒い魔力を溜め始めた。 私は絶望した。教祖相手にするのはやっぱり…。 急いでミモザの手を握った。 「ミモザ、私のために命かけてくれてありがとう…。」 「シレネ…!私こそ、勇気与えてくれて、ありがとうな…!」 ミモザは最後まで笑った、涙を流しながら。 強がりだなあ…でも、もし転生してもまた彼女と会いたい…。 そして本当のシレネに会いたい…。  「時間だ、じゃあな、裏切り者。」 グリジアの魔力が私たちに迫ってきた。 「ごめんね…!シレネ…!」 シレネに旅させたかったと思いながら目をつぶって死を待った。  「……あ、あれ?」 一向に痛みがこない。 「な、なにこの光は…!」 グリジアの魔法は光に吸収されて消えていた。 その光は私の体から出てきていた。
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