4人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
Nightmare
肺の中まで熱く湿った空気が充満して、息が詰まりそうになる。生ぬるい雨が容赦なく降り注ぎ、脳天からじっとりと重たく滴り落ちる。
ああ、またこの感覚は――
辺りを見回す。きっとここにいる。何処かに、近くに、絶対に。
高い木々から低いものまで一面緑だ。ジャングルというやつだろうか。遠くでなにかの鳥が鳴くのが聞こえた。雨が降っているのに、木々の隙間から覗く空はやたらに明るい。だが、陽射しが地表に届くのを奪い合うほどに、この地の主たる植物たちは鬱蒼と茂っている。地面は雨のせいなのかぬかるみ、足をとられる。
連続した乾いた音が耳に届く。
嫌な予感がする。呼吸が荒くなって、耳障りだ。早く探し出したいのに、深い泥が両足をつかんで離さない。
何語かわからないが、怒号のようなものが後ろから飛んだ。同時に気配が満ち溢れて、静寂を打ち破る。
来た!
反射的に大木の近くで身をかがめる。爆発音が耳をつんざく。鼓動が跳ね上がる。続いて乾いた音の応酬が始まる。おそらく、あれが銃撃戦というやつだ。さっきの爆発は火炎瓶だか手榴弾だか、そんなのはどうだっていい。
はやく、見つけ出さないと…!
辺りを見回しながら、なるべく水音をたてないように動く。何かの戦闘に巻き込まれたのは確かだが、自分は一介の高校生であり、彼らの主義主張など知ったことではない。
人影を木々の向こうに見つけ、動きを止めた。そいつが向けた銃口の先を見やる。
「!」
危ない、という言葉を発する間も惜しく、俺は走り出す。泥ですべって、転びそうになる。追いつけ、この体! あいつのところまで!
雨に打たれ立ち尽くす姿にしがみつくように飛びついた。そいつと倒れ込む瞬間に、肩に熱い衝撃が走った。
撃たれた、っていうやつかも…
最初のコメントを投稿しよう!