1.出会い

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その後、実玖は何か用事があったらしく、俺達はそこで別れた。 別れ際に彼女は、 「ストリートライブ、楽しみにしていますね!」 と、笑顔で手を振りながら帰って行った。 1人になった俺は彼女を見送った後、しばらく呆然としていた。 こんなことは初めてだった。 家を出たときとは全く異なる、ふわふわとしたなんとも言い難い感覚。だけどそれは、やや右肩下がりだった俺のモチベーションを少し持ち上げてくれた。 仮に来てくれなくても構わない。 こうやって優しく声を掛けてくれた人もいたのだ。 優しくしてもらった恩を返すだなんて、そんな大それたことは言えないけれど、少なくとも彼女がくれた優しさを無駄にしないためにも、まずはきちんと練習しよう。 「………よし」 深呼吸をして、気合を入れ直した俺は、ストリートライブで歌う歌の演奏と歌詞をチェックしながら、入念に調整した。
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