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その後、実玖は何か用事があったらしく、俺達はそこで別れた。
別れ際に彼女は、
「ストリートライブ、楽しみにしていますね!」
と、笑顔で手を振りながら帰って行った。
1人になった俺は彼女を見送った後、しばらく呆然としていた。
こんなことは初めてだった。
家を出たときとは全く異なる、ふわふわとしたなんとも言い難い感覚。だけどそれは、やや右肩下がりだった俺のモチベーションを少し持ち上げてくれた。
仮に来てくれなくても構わない。
こうやって優しく声を掛けてくれた人もいたのだ。
優しくしてもらった恩を返すだなんて、そんな大それたことは言えないけれど、少なくとも彼女がくれた優しさを無駄にしないためにも、まずはきちんと練習しよう。
「………よし」
深呼吸をして、気合を入れ直した俺は、ストリートライブで歌う歌の演奏と歌詞をチェックしながら、入念に調整した。
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