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柊希さんと出会ったのは、本当に偶然だった。
***
私には半年前まで婚約者がいた。
友人の紹介で出会った私達は、2年半付き合ってから結婚を決めた。そして、お互いの両親に挨拶をして、結婚式場を決めて………ここまでは良かった。
不穏な空気になり始めたのは、両家の顔合わせを調整していた頃だった。
お店も日にちも決めていて、どういう段取りで行うか…などを話し合っている最中、突然婚約者のご両親が「本格的な顔合わせの前に、一度両家で会いたい」と言い出したのだ。
婚約者からその話を聞かされた私は、初めてのことということもあり「そういうものなのだろうか…」と思いながら、自分の両親と相談した。両親も、“自身の子供の結婚”はこれが初めてだったから、少しばかり腑に落ちないながらも、婚約者側の要望を受けた。
ホテルに併設されているカフェでお茶をしながら敢行された“プレ顔合わせ”は、傍目には滞りなく終わったかのように見えた…が、その数週間後、私は婚約者から予想外のことを聞かされた。
「両親が結婚を反対している」
意味が分からなかった。
挨拶に行ったときはそんなことは一言も言っていないどころか、“これからよろしく”と言われたくらいだった。
“プレ顔合わせ”で何かあったのだろうか?
理由を言いたがらない彼を必死で説得し、話を聞くと、どうやらそれではないらしく、もっと根本的なところだった。
「うちの両親が、君の良いところを1つも見つけられない、と言うんだ」
それを、当時愛していた婚約者から聞かされた際の自分の感情を、私は今でも思い出せない。
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