西島香澄

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「教えてくれるの?」 「香澄が嫌じゃなければ」 「嫌な訳ないよ。ちょっと待って」 私は慌ててスマホを取り出しパパのQRコードを読み取った。 そして友だち追加のボタンを押した。 「これでいつでも連絡が取り合えるね」 「うん」 私は嬉しくてこの場で思い切り飛び跳ねたくて仕方なかった。 嬉しくて笑顔になるはずなのに、笑えなくて引きつって顔が強張ってしまった。 私の顔、パパの目にはどんな風に見えてるだろう? そうこうしているとタクシーが私のマンションの前で停車した。 ドアが開き外に出ると、パパもタクシーから下りて来てくれた。 「じゃあまたね」 パパは何気なく言った「またね」かもしれないけど、その言葉はまた会えると言うとてつもない重要で希望の言葉に聞こえた。 「メールとか電話してもいいの?」 「もちろん、いいよ」 「・・・・・」 こんなに嬉しいことが私の人生で1度だってあっただろうか? いや、なかった。 この瞬間を私はずっと待ち焦がれていた。 ずっと願っていた。 「いつでも連絡してきていいから」 「夜中でも」 「寝ぼけてるかもしれないけどね」 「授業中にしても」 「先生に怒られないように」 「そっか、わかった。じゃあね」 嬉しくて私はそれだけ言うとダッシュでマンションの入り口に向かって走り出した。 振り返るとパパが見ていてくれて、嬉しくて嬉しくてパパの姿が見えなくなるまで何度も振り返りながら手を振った。 「ただいまぁ」 「おかえり」 家の中に入ると玄関までママが出迎えてくれた。 「ご飯は?」 「食べてきた」 「何食べてきたの?」 「お寿司…」
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