西島香澄

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パパを待ち続けて9年が経とうとしていた。 そう願っている反面、もう2度と会えないんじゃないかという諦めも私の心には根付いていた。 でも会いたい。 もしも偶然街ですれ違うことがあったら、パパは私のことがわかるだろうか? きっとわからないと思う。 背も伸びたし、小学生の時までショートカットだった髪も今は肩よりも長くなっている。 顔だって少しは大人っぽくなったと思う。 胸だって…。 微かな希望もあった。 ママの高校生の時の写真を見せてもらったことがあったけど、私はママによく似ていた。 パパがママ似の私を見たら、何かを感づいてくれる可能性はある。 逆に、私がパパを見て直ぐに気付けるものかと自信が持てなくなる時もある。 私は幼少期の頃に一緒に撮ったパパの写真がある。 自分の部屋にいる時は、アルバムを開いて、毎日触ってボロボロになってしまったパパの写真を穴が開いてしまうくらい見ている。 暇さえあればパパの写真とにらめっこをしている。 学校に行く時は、机の中に閉まって鍵をかけておく。 1枚だけ鞄の中に入れて持ち歩いている。 私のお守りみたいなものだ。 それを持っているというだけで、心が落ち着くし何でも頑張れそうな気がする。 暦は6月。 高校に入学して3ヶ月が経とうとしていた。 「香澄ちゃん、今日もバイト?」 「うぅん、今日は休み」 「なら、何か食べに行こうよ」 「いいよ」 私を誘っているのは私の親友の日野舞香。 舞香は高校1年生ながら、ちょっと大人びた品のある美人だった。 舞香は名家のお嬢様で習い事もいくつかやっていた。 私と違ってバイトをしなくても親から欲しい物なんて何でも買ってもらっていた。 羨ましいとは思っていたけど、舞香は親からは厳しく育てられたらしい。 将来は親の決めた男性と結婚させられると言っていた。 未だにそんな話があるなんてにわかには信じられなかった。 舞香は家では話し方とか作法など厳しく言われてきたようだけど、私の前ではどこにでもいる普通の女子高生と同じだった。
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