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トントンっ――
「どうぞ」
ドアを恐る恐るノックすると、担当医師の戸澤先生がドアを開けて中に通された。
「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ」
「あの…お母さんの手術のことなんですけど…」
「どうかしましたか?」
「お金が…手術代が…」
「全額頂いているので、3日後には手術をさせて頂きます。これでお母さんも元気になりますよ。良かったですね」
「えっ…私たちお金は支払っていません」
「既に支払われていますよ。間違いありません。安心して下さい」
どういうこと?
私たち一銭も払ってない。
払ってないのに払ってることになってる。
誰かが私たちの代わりに支払ってくれたってこと?
だとしたら吉野さんが?
そうだ…そうに違いない。
「誰が手術代を払ってくれたんですか?」
「それが私にもわからないんです…どういう経緯かはわかりませんが、何千万という現金が入ったアタッシュケースがメモ書きと一緒にナースセンターの前に置かれていたんです。メモには《櫻井さとみ様の手術代と入院代、その他諸々の代金です。最高のおもてなしで扱って下さい》と書かれていました。お金は手術代とかを差し引いても有り余るほどの現金でした。あなた方には、もの凄い資産家のご親戚がいらっしゃるんですね。本当に羨ましい限りです」
それから手術に関する話しを担当の先生からこと細かく説明された。
でも全くと言っていい程、頭には入ってこなかった。
思うことは、手術代を支払ってくれたのは本当に吉野さんだったのか?
それとも他に誰かがいたのだろうか?ということだった。
そして戸崎先生の話を聞き終えた私といずみんは2階のお母さんの病室に向かった。
「いずみん、ちょっと先に行ってて」
「うん…」
どうしても事の真相が知りたくて、いずみんを先に病室に向かわせた。
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