西島香澄

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3人で一緒にいてもお喋りをするのは私と舞香。 詩美はあまり喋らない。 私と舞香の話を聞いている。 時々私たちの会話を聞いてクスクス笑っている。 カラオケやゲーセンに行っても詩美は歌わないしゲーセンに行っても1人で黙々と遊んでいるか、私たちのプレイをジッと見ている。 一緒にいても楽しんでいるようには見えないけど、私たちと一緒にいるところを見ると、少しは楽しんでいるのかもしれない。 最初の頃は楽しませなきゃいけないと思い、気を遣っていたけど、数ヶ月も一緒にいればそんなものはなくなってくる。 気は遣わなくなるし、詩美がそうしていることが自然になってくる。 何も言わないけど楽しんでるのがわかってくる。 「どうしようっか?」 校門を通り抜けて、3人でどこに行こうか考えながら歩いていた。 「こんにちは」 突然うしろから男性に声をかけられた。 「どちらさまですか?」 舞香は怪しげな目でその男性を見つめてそう言った。 詩美はその男性を睨みつけていた。 「あぁぁ…」 その男性を見た途端、私は余りの衝撃で動けなくなってしまった。 「私は西島彰と言います」 「にしじまさん? 私たちに何かご用ですか? 変な事をしようとしてるなら警察呼びますよ」 最近、学校の先生から学校の周りで変な男がうろついているから気をつけるように指導されていたばかりだった。 舞香が警戒するのもわかる気がする。 でも、違う。 詩美は動けない私を自分の背後に隠した。 「舞香、詩美違うの」 「何が違うの?」 「私の…パパなの」 「パパって…」 そう、私たちに話しかけてきたのは9年ぶりに会う、私のたった1人のパパだった。 体中の血管が激しく脈をうち、心臓もバクバクと物凄い鼓動を始めた。 頭に血がのぼり、顔がカァッと熱くなるのを感じた。
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