西島香澄

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「香澄の父親の西島と言います」 「パパ…」 「香澄…」 パパは優しく微笑み、私の頭を撫でてくれた。 色んな感情が私の中で駆け巡り言葉にならなかった。 気付くと涙が頬を伝って流れ落ちた。 「ちょっと待って下さい。意味がわからないんですけど。今まで何年も香澄の前に現れなかったのに、どうして突然現れたりなんかしたんですか? 何で今なんですか?」 舞香らしからぬ強い口調だったけど、私の生い立ちを知っているが故の言い方なのは痛いほどわかった。 その男性が私のパパだとわかっても、詩美は私を背後においた。 「あなたは日野舞香さん?」 「そうですけど…」 「いつも香澄と仲良くしてもらって、本当にありがとう。これからもよろしくお願いします」 「は‥はい」 「あなたは松乃詩美さん?」 「えぇ」 「いつも香澄がお世話になっております。どうもありがとう。これからも仲良くしてやって下さい」 「まぁ…」 パパは舞香と詩美のことを知っていた。 どうして? 一体誰が? もしかしてママ? ママから聞いたってこと? ということはパパとママは連絡を取り合っていたということ? 「舞香…詩美…」 私はそれ以上何も言わずに舞香と詩美を見つめた。 言葉など必要なかったから。 「わかった。でも大丈夫?」 「うん」 2人は私がパパを何年も思い続け、会いたがっていたのを知っていた。 私がパパの写真を鞄の中に入れて持ち歩いているのも、どこに出掛けていてもパパを探しているのも知っていた。 だからパパを目の前にした私を喜んでくれてる反面、心配だったに違いない。 「何かあったら連絡しろ。直ぐに駆けつけるからな」 詩美は私の肩に手を乗せてそう言った。
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