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 店を開ける時間ではないのに壊れた原付を押してやって来たタムおばさんに、「まだ結婚はしないのか」と余計なことを訊かれた俺は朝から気分が悪かった。学校へ行く支度を済ませた妹のミオが「そろそろ行きたい」と助け船を出してくれたので俺はいそいそと小型二輪を店の広い出入り口から押し歩きで出した。 「ミオちゃん今日は早いのね」と声を掛けるタムおばさんに「うん。午前授業なんだ」と何食わぬ顔で答えるミオ。午前授業だとしても早い出発だ。俺は店の奥にいる父親に「行ってくるよ」と言ってからタムおばさんに少しだけ笑顔を見せて挨拶しミオを長い座席の後ろに乗せて出発した。 「あたしいいことしたでしょ」背中に身体をピッタリとくっつけたミオが二輪の走行音に負けないような大声で言った。俺はミオにもわかるように「うん」と大袈裟に頷いた。 「おばさんもしつこいよねー」 「うん」 「でもさあ、にーちゃんさあ、そろそろケッコンしたらってあたしも思うよお」  信号で二輪を止めた。俺は首を少し動かし「俺がいなくなったら誰がメシ作るんだ?」と言った。 「お嫁さんとうちで暮らせばいいじゃん」 「俺はいいよ、そういうのは」 「タムおばさんに一生ああいうこと言われるんだよお」 「一生言われることにする」
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