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 俺には妹が四人いる。末っ子のミオ以外は皆結婚して家を出て行った。タムおばさんを含めた周囲の誰もが「次はティンの番だ」と口にする。うんざりだ。  小学校の前は送り迎えの車やら単車やらでごった返していた。屋台を引いた人々までいて祭りのようである。これが午前授業が始まる前のいつもの風景だ。タムおばさんから逃げてきたために朝食を摂らなかった俺達はミオの「お米がいい」という希望どおり屋台で餅米を蒸した料理を買って二輪の座席に跨りながら食べた。肉やら海老やらを乗せた餅米に辛い調味料をたっぷりかけて頂く。食の細いミオが残した分は全て俺の胃に収めた。  ミオの登校を見送ったらすぐに店に戻って開店の準備だ。幸いタムおばさんはもういなくなっていた。修理の済んだ二輪を確認し遅めの朝食を摂る父親を尻目に店を開けた。父親の食事が終わるまで店番をして、それが済んだら貨物自動車で輸入業者の元へ向かった。ニォーズオンよりはいくらか豊かな極東の国から運ばれた中古の二輪を安く買い取り店に戻って使えそうな部品を残していく。  そんなことをしているとあっという間にミオを迎えに行く時間になる。午前授業の日はいつもバタバタしている。これでも楽な方ではある。二番目と三番目の妹がいた頃はもっと忙しかった。
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