引っ越し

2/2
前へ
/13ページ
次へ
 街並みはあっという間に終わりに近づき、片道一車線の小さな道路が線路と平行に走り出す。この通りがこの辺りのメイン通りだと思われる。  それでも、その道路でさ走行する車の数は疎らで、もちろん人通りは全く見られない。  空港の近くまでは、こんな寒々とした寂しいだけの街並みが点在しているはずである。そんなところにも関わらず私は人の姿を探している。  多分、それは誰かに見送られたい気持ちが私の中にあるせいなのだと思う。  静かな街並みはあっという間に終わろうとしている。  畑や藪が多くなり、民家はかなり疎らとなって来ている。もう、人を見つけられるような場所では無くなっている。  この先街並みが見られるのは、次の街に入ってからになるだろう。  そう思っていると、    あれっ、人?…人だ、人が居る。  道路脇に軽自動車を止めたその前に人が立っている。  何か、それだけで感激してしまう。  どんな人だろう?  私がそう思い見ていると、列車が近づくにつれ、その人は私の乗っている車両の方に顔を向けているような気がする。  もしかして、知り合いが私を見送ってくれているのだろうか?  何て思いたいけど、沢山人を乗せている列車なのだし、偶々通りかかった列車を見ているだけの人かもしれない。  でも、何か違う気もする。  それだけではない気がする。  その人の列車を見つめる姿が、私の記憶の何かに引っ掛かっている。  何だろう?  思い出せそうで、思い出さない。  何だっけ…
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加