今日子と響子の出会い

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今日子と響子の出会い

※真理の回想  今日は『大和学園』の中等部の入学式の日でした。  大和学園の制服は小学部は男女ともにブレザーの上下で女のお子様もハーフパンツで過ごされます。  中学部からもブレザーでございますが、キュロット、スラックス、スカートを選ぶことができるようになっています。胸につける学年ごとに色の違うリボンやネクタイも自分で選べるようになっています。  響子お嬢様は入学式の日にはすべて揃えておいでになりましたが、入学式にはスカートをお選びになり、今年の1年生の色である紺地に赤いストライプのリボンを襟元にお付けになり、完璧な着こなしで入学式に望みました。  また、中学校からの編入性も含めた中学校に入る時の試験でトップをお取りになったので、入学式では新入生挨拶を代表として行いました。  妊娠出産をして、4か月しかたっていないなどとは誰も信じられない程に誰よりも素晴らしいプロポーションと、お子様を産んだことによる責任でお顔のあどけなさは消えてしまいましたが、きりっとした美しい目元、スッと通った鼻筋、形の良い唇と、元より白かったお肌は更に透明感を増して、他の新入生とは違いすっかり大人びて見えるのです。 ※笹森今日子の回想  私は、これまでの公立の学校とは全く雰囲気の違う『大和学園』の入学式で緊張しまくっていました。  薄いグレーのブレザーの制服はとても生地が良く、母親に随分と嫌味を言われるほど高価でした。ブレザーの下のブラウスも合わせて、一組しか買ってもらえませんでした。  下はキュロット、スカート、スラックスを選べるのですが、どれか一つしか買えないと言われ、無難にスカートを選んだのでした。  学年別の色のリボンはネクタイも選べるのですが、買ってもらえたのはリボンだけでした。  夏服の時期になったら、夏用のブラウスと、必要であれば日よけ用の薄いカーディガン、夏用のスカート、キュロット、スラックスなども用意が必要になります。  私は夏の制服を買うまでに家でのお手伝いを、毎朝の仕込みと、毎日部活動が終ったら必ず手伝う事を約束させられました。    入学式では西園寺財閥のお嬢様である西園寺響子さんが新入生代表で挨拶をしていました。  同じ『きょうこ』という名前なのに、私とは随分な違いです。  小さい頃よりは、身なりにも気を配るようになった私は、顔立ちは変える事はできなくても、黒く量の多い髪を伸ばしていました。  そして学校の規定通り耳の下からのおさげにして二つに結んでいます。  少しだけ顔にかぶさるように髪を前に持ってきて結べば、頬骨も少しは目立たなくなる気がしました。  制服にも家業の弁当屋の油のにおいがつかない様に姉の明日香を見習い消臭剤を使い、制服はきちんと袋をかけて、臭いがつかないように工夫をしました。  入学式が終り、各クラスに分かれてのHRがあるとのことで、担任の後ろについて、移動しました。  決められた名前の書いた席に座ると、おそらく「あいうえお」順なのでしょう。西園寺財閥のお嬢様が同じクラスで、私の前の席にいました。  クルクルと全体にカールした薄い茶色の髪が私と同じように耳の下でおさげにされ二つに結ばれていますが、おなじおさげでも響子の髪はおさげの先もクルリと丸まって大層可愛く結んであるように見えます。  前髪も厚ぼったくて真っ黒な髪で頬を隠すように少し前に被せている私とは違い、ピンできちんと止めてその美しい顔が全部出るようにしてあります。  それに、これまでにかいだことのないとても良い香りが響子の方から漂ってきます。 『なにかしら?香水?は禁止されているのだし、シャンプーとかかしら?それにあんなに可愛かったら顔を全部出してもいいものね。』  同じブレザーの制服で、入学式の日はたまたま同じだったスカートも同じ。胸についているリボンも同じ。  まるで同じ制服なのに、西園寺響子のウエストはサイズ調節用のベルトがきゅっと閉められ大きな形の良い胸の下は女王バチの様にくびれています。  そして、スカートは細いウエストからふんわりと広がり、細く形の良い脚がすらりと出ているのです。  それは規定通り膝丈のスカートなのですが、今日子の膝下とは同じと想えないような美しいふくらはぎの形でした。  おまけに足首はきゅっとしまり、親指と人差し指でもつかめてしまいそうなほど細いのです。  私ときたらきっと元々の制服のサイズからして西園寺響子よりも2サイズは上でしょう。それなのにウエストの調節用の後のベルトは一番広げてあります。  身長は西園寺響子の方が高いのに。です。  私は上から下までまっすぐなシルエットなのです。  小さい頃から変わらず、ずんぐりとしているのでした。  家のお弁当屋のお惣菜は売れ残ると必ず食卓に乗るのですが姉の明日香は一つで食べ止むのに、私はどうしても、もう一つあと一つと食べてしまいます。  揚げ物が大好きなのです。  更に私は目を落として自分の足首を見て大層がっかりしました。 『あぁ、お母さんになんとかスラックスを買ってもらえないものかしら。でも、試着の時に見たスラックスの形だと、お尻がすごく大きく見えてしまうもの。あぁ、やっぱりだめよ。スカートの方がまだましよね。』  担任が編入生の為に『大和学園』の細則を話しているのに半分は上の空でした。  でも、細則は入学のしおりにも書いてあったので、半分聞いていれば充分頭に入ります。  担任は名門校の教師らしく、きびきびと話しを進めていきます。吹き溜まりだった響子の小学校の教師とは随分な違いでした。 「『大和学園』は男女共学ですが、男女交際は禁止されています。  みんな何らかの部活動に参加することになっています。  その他、高等部になってもアルバイトも禁止されています。当然中等部でもアルバイトは禁止です。  もし発覚した場合には退学もあり得ますので、十分に気を付けてください。  服装は基本的に制服であれば組み合わせは自由です。  6月からは夏服に切り替わりますので、5月中には販売店で買い求めてください。  クラスの総代は最初の学期なので私が決めます。  新入生代表で挨拶をしてくれた西園寺響子さんと、副総代は、成績が編入生なのに西園寺さんに次いで2番目だった笹森今日子さんにお願いします。  後、転入生の笹森さん。放課後、職員室の私の所まで来てください。  あ、西園寺さん、申しわけないですが、笹森さんに職員室を教えてあげてください。  では、本日は授業は在りませんので、明日から時間割に従って授業を行います。」  日直も決まっていないので、総代である響子が号令をかける。  美しく澄んだ声で、 「起立・・皆様さようなら。」  これが、『大和学園』の帰りの挨拶の様だ。 『皆様。だって。私、馴染めないわ~。』  そう私が思った時、 「笹森さん?今日からどうぞよろしくお願いいたしますね。西園寺響子です。さぁ、職員室へ参りましょう?」 「あ、はい、よろしくお願いします。笹森今日子です。」  クルリと後ろを向いた西園寺響子のその美しい顔と、胸だけは私と同じくらいあるのを見て、そのスタイルの良さと容姿の美しさに驚き、しどろもどろになって、私は思わず真っ赤になってしまいました。  響子の後について、職員室まで着くと、 「何かわからない事があったら聞いてくださいませね。外からのご入学なのに成績がよろしくて素晴らしいですわ。今度一緒にお勉強でも致しましょう。それでは、ごきげんよう。」  と、さわやかに西園寺響子は小学校から入っているという華道部に歩いて行きました。  職員室に入ると、担任が目に入ったので、近づいて行きます。 「あぁ、笹森さん。みんなの前で言いたくなかったので職員室までご足労頂いたよ。あなたの前髪ね。もう少しピンでとめたり、もう少しきつめにおさげにしたらそんな風に顔にかからないのではないかと思ってね。 『顔にかからない様、髪をまとめる事』と校則の細則に書いてあるので。  明日からはそのようにしてきてくださいね。」 「あ・・はい。すみません。そうします。さようなら。」  ぶっきらぼうに答えて、職員室を出ると、編入性の為部活動が決まっていない私は、母との約束のお手伝いをする為に大急ぎで家に帰り、制服を脱ぎ、消臭剤をかけてビニールにしまい、店に降りて行きました。      
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