1:千年の命も尽きづき

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1:千年の命も尽きづき

「村長様! ビュウ様!」  のどかな村に響き渡る、悲鳴にも似た叫び声だった。ガラガラと勢いよく玄関の扉が開かれる。  ただ事ではないと察する私。  玄関に駆けていくと、そこには息を切らした(おおかみ)の妖怪・ペウが立っている。 「いかがなさいましたか」 「イサが……何かに襲われた!」 「なんですって⁉︎」  遅れて、九尾の妖怪である村長も玄関に着いた。 「その『何か』というのは、わしらと同じ、妖怪かね?」  ペウは首を横に振り「それすらもわからない!」と悔しそうに答える。  ということは、妖力でどうにかなる相手ではない。村民が危険だ。 「とりあえず、私がイサさんのところに向かいます。ペウさんは村長と一緒に各地区長を回って、みんなに外に出ないことと、家の鍵を閉めることを伝えてください」 「学校にも連絡した方がいいよな?」 「もちろんそうですね」 「じゃあまず俺だけで学校に行く」  勇ましい顔つきになるペウ。 「村長は先に各地区長のところへお願いします」 「承知した」  素早く指示出しを終えると、私は真っ先にイサの家へと向かう。
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