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私の名前はコン・ビュウ。白金村の村長補佐をしている九尾の妖怪だ。
この小さな白金村ではみんなが顔見知りであり、名前さえ聞けば家の場所までわかる。イサはペウの右隣に住む、猫又の妖怪である。
妖力によって加速した私の体は、風と一体化しているように思えた。
「近くで暴行事件が起きました! みなさん家から出ずに戸締りをお願いします!」
走りながら、私も声がけをしていく。こんなことは、私が千年生きた中で前代未聞のことである。これ以上被害者を増やさないようにしなければならない。
少し息が切れてきたころに、イサの家付近に到着した。
ガチャ、ガチャガチャ……
私の耳が、金属と金属が触れ合うような音を感じ取った。
サッとその方向を向く。民家のドアを何やらいじっている動物がいる。
しかし、それは妖怪ではないとすぐに気づいた。人間だ。器用なその『手』で鍵穴を探っているようである。
「何をしているのですか」
人間が振り返った。頭から黒い被り物をしており、目と口しか出ていないので、顔がわからない。
人間は無言のまま、鍵穴を探っていた棒をバッグにしまって立ち上がる。棒の代わりに、手には五寸程度の刃物が握られていた。
その刃物は既に使用済みだった。刃の半分くらいまでが血で染まっている。
刃先を私に向けながら、人間は突進を始める。動きはのろい。私は妖怪なので、ひらりとそれをかわす。
「イサさんに何をしたのです」
質問をしても、やはり無言のままだ。
「どうやってこの村に来たのかは知りませんが、あなたをそのまま返すわけにはいきませんよ」
そう、生かしたまま捕まえなければならない。
人間の生身は貧弱なので、生け捕りは難しい。噛んだり引っ掻いたりすれば、すぐに死んでしまう。
それならば。
「変化」
私は、銀髪で超長髪の人間の姿に変化した。
九尾は色々な姿に化けることができる。人間を捕らえるならば人間の姿の方がやりやすいだろう。
攻撃は、妖術ならばコントロールしやすい。
「雲隠し」
人間の周りを妖力の煙で覆う。内側から外は見えないものの、外側からは中が見えるものだ。
人間がひるんでいる。捕まえる妖術を発動しようとした、その時。
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