2:転生したら異国のお嬢様だった件

3/3
前へ
/34ページ
次へ
 何もすることがわからない私は、とりあえず辺りを見渡して、鏡がある家具を見つけた。 「この体のバネッサという方は、どのようなお顔なの」  起き上がって、履物もなしに裸足のままでペタペタとその家具の方へ歩いていく。  鏡に自らの姿が写った。  銀髪という点は同じだった。  しかし、くせ毛なのか巻いているのか、大きくうねりがある。顔の彫りは深くて整っている。目の色は琥珀(こはく)のような黄色で美しい。  これが他人の姿であるならば構わないのだが、間違いなく自分の姿である。「えっ……」という声と口の形が一致しているのもあって、より実感させられる。 「どうしてこうなった……」  記憶を持って転生するなら、また妖怪として生まれ変わりたかった。こんな全くの異国では、この千年の経験はどこにも通じないではないか。唯一、会話が成立するのが奇跡的だ。  私は絶望感に打ちひしがれながら、部屋の外でバタバタと走り回るような音を聞いているしかなかった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加