3:王太子からの婚約破棄

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3:王太子からの婚約破棄

 父と母は記憶喪失の私を見舞いにきたものの、アグスティナという妹だけは来なかった。貴族だというのに礼儀はどこにいってしまったのか。なんとも非常識な人だ。  初日はバルタサルに最低限のルールやマナーを教えてもらい、眠りについた。  次の日も、昨日と同じ天井だった。夢であればよかったのに。 「おはようございます、お嬢様」 「ごきげんよう」  朝の挨拶に来たバルタサルに、しっかり貴族の言葉で返すことができた。 「本日は、午後二時より王太子殿下がお見舞いに来られます」 「殿下が直々に⁉︎」 「ご結婚予定の方とあれば当然でしょう」  まぁ、そうか。妹が非常識なだけで。 「それまでは、少しずつ(わたくし)とお勉強とお作法の練習をいたしましょう」 「承知いたしました」  王太子の人柄はどうなんだろう。  私が記憶喪失だと知って、どのような反応をしたのだろう。そして、私とどのように接するのだろう。  私はまだ貴族の正しい敬語もたどたどしい人間だ。王太子に失礼がないようにしなくてはならない。  いや、こういうときは誠意を表せば大丈夫だ。たどたどしくても、貴族の人とあれば誠意はしっかり伝わるだろう。
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