47人が本棚に入れています
本棚に追加
「お父さんのお店は大丈夫なのかな」
肇男は新宿歌舞伎町にある店で働いている、としか聞いていない。店の名前すら知らなかった。
恵峰の母・津辻はホストの逮捕のニュースが何度報道されようが、肇男がホストクラブで働いていることをまったく心配していない。それほど肇男のことを家族として信頼しているのだろうが、恵峰は母親のそんな態度がふしぎでならなかった。
夕方 、恵峰は大学の講義を終えて、帰宅する。第一志望だった私立大学に入学して、早一ヶ月。恵峰は高校を卒業しても親元を離れることなく、新宿区のマンションに両親と住んでいた。大学は実家から近いので、ひとり暮らしは考えていない。
「ただいま」
恵峰がリビングに入ると、津辻はボストンバッグに衣類をつめこんでいた。
「お母さん、どこか出かけるの?」
最初のコメントを投稿しよう!