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伊月の指先が睡蓮の内股を伝い上がった。
「大丈夫ですか」
「はい」
そっと触れるとその場所は湿り気を帯び指で触れると糸を引いた。
「指は入れない方が良いですか」
「分かりません」
「指の方が硬くて異物感があるかもしれません、このまま出来るところまで続けましょう」
「分かりました」
「ゴムを着けますから待っていて下さい」
それはまるで病院で受ける問診の様でふと笑みが溢れてしまった。枕の下からコンドームを取り出した伊月はそれを素早く根本まで着けると睡蓮へと当てがった。瞬間、睡蓮の肢体が強張った。
「やはりやめましょう」
「嫌です」
「緊張していますよ」
「嫌です」
「睡蓮さんは意外と頑固ですよね」
「お願い、やめないで下さい」
伊月は壊れ物を扱うようにひだの中にそれを押し付けた。奥に睡蓮の肉壁を感じそれだけで目眩がした。
「痛いですか」
「分かりません、まだ入っていないの」
「まだ入っていません、少し入れますよ、痛かったら言って下さい」
医師の様に淡々と接しているが伊月は今この瞬間にでも膜を破り中に入りたい衝動に駆られていた。ズブっと先端を受け入れた睡蓮は「あっ」と痛みを訴え伊月の腕に爪痕を付けた。
「せ、先生、入ったの」
「少しだけです」
「まだ痛いの」
「女性の痛みが如何か説明は出来ませんが個人で違う様です」
やはり問診を受けている様で緊張は和らいだ。
「血液検査の注射より痛い?」
「痛いと思います」
「そんなに痛いの」
問診のような遣り取りをしていた所為だろう。伊月は陰部の張りが少なくなっている様に感じた。
(今なら痛く無いかも)
「睡蓮さん、我慢して下さい」
「えっ」
「ごめんなさい!」
「えっ!あっ!」
睡蓮は鈍い痛みに腰を反らしたが伊月の両手が尻を引き寄せ陰部が肉壁へと到達した。膣内の温もりを感じた。
「痛かったですか」
「痛かったです、でも、でもこれで終わりじゃ無いですよね」
「終わりにしておきましょう」
伊月は陰部を抜き処理すると睡蓮の肢体を起こして股座を見せた。淡いグレーのシーツには赤茶の染みが付いていた。
「これ」
「はい」
睡蓮は伊月の手を握りながらそれを凝視し涙を流した。
「これがそうなのね」
「はい」
それは痛みを伴う行為だったが愛する人に抱かれたという幸せが睡蓮を包み込んだ。
「先生、ありがとう」
「はい」
雅樹と結婚して約2ヶ月、虚しく寒々しい日々だった。
「先生、ありがとう」
「はい」
ようやく人の温もり、愛すべき人に辿り着いた睡蓮は女性としての喜びを知った。伊月の胸に抱かれて迎えた朝は眩しい陽射が降り注ぎ、2人は優しい口付けを交わした。
「睡蓮さん、送って行きますよ。準備は良いですか」
「はい」
「荷物、持ちますよ。身体は大丈夫ですか」
「ありがとうございます」
光が乱反射する車のサイドミラーに映った睡蓮の目には力強いなにかが宿っていた。
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