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出会い
厳かな時間、白いチュールのウエディングベールはシャンパンゴールドのドレスの裾に波打った。ヘッドドレスはアクアマリンのスワロフスキーが光を弾き、八重咲の薔薇が咲き乱れた。
「汝、和田 雅樹は、この女、叶 睡蓮を妻とし、良き時も悪き時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分つまで、愛を誓い、妻を思い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」
「汝、叶 睡蓮は、この男、和田 雅樹を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分つまで、愛を誓い、夫を思い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻のもとに、誓いますか?」
「誓います」
左の薬指に輝くプラチナの結婚指輪。
(あの隣に)
荘厳なパイプオルガンが新郎新婦の新しい門出を祝い、親類縁者の拍手が感動の涙を誘う。新郎は和田医療事務機器の御曹司、新婦は叶製薬株式会社の愛娘、参列者は教会の聖堂内に入り切らなかった。
(私があの隣に居たかった)
そんな中、一人の女性が真珠のような涙を零していた。その面立ちは新婦に瓜二つ、髪の色はやや深いロイヤルブラウンとその雰囲気は異なるが、陶磁器の白い肌、桜色の頬、やや伏し目がちの長いまつ毛に隠された黒曜石の瞳、赤くぽってりとした唇は合わせ鏡のようだった。
(私が、私があなたの隣に)
それは深淵の悲しみの涙。
(私が)
恥ずかしげに微笑む亜麻色の髪の睡蓮と対照的な木蓮。二人は双子の姉と妹だった。
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