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妹の木蓮は快活で幼い頃は庭の泰山木に登って両親を不安にさせた。
「お嬢さま、降りて来て下さい!」
「いやーだもーん!」
「あっ!」
「えへへ、落ちちゃった」
姉の睡蓮は両親の背後に隠れる引っ込み思案で言葉少なくこれもまた心配の種だった。
「睡蓮、あなたどっちのお土産が良いの?」
「・・・・・・・・」
「睡蓮、早く決めないと木蓮が貰っちゃうよ!良いの!?」
「・・・・・・・・」
「二人を足して半分に割れたら良いのに」
母親はそう言って溜め息を吐いた。
「お見合いのお話があるの、良い方なのよ」
年頃と言っても24歳の春、母親が見合い写真と釣り書きをテーブルに置いた。
「和田医療事務機器の息子さんだ」
「お父さんに都合が良いだけじゃない」
「木蓮!」
木蓮は見合い写真を見る事もなく突っぱねたが、睡蓮は躊躇いながらも写真と釣り書きに目を通した。
「優しそうな方ね」
「そうだろう!しかも金沢大学卒業の秀才だ」
「どうせ裏金入学でしょう」
「木蓮!」
「会社の都合もあるでしょうから、私、お会いしても良いわ」
「睡蓮!あなた馬鹿なの!一度でも会ったら次の日には結婚式場よ!」
「まさか、ねぇ、お父さん」
父親の視線は宙を泳いだ。
「ほら、見て」
「本当だ」
「騙されちゃ駄目よ」
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