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ピンポーン ピンポーン
<ご来院中の皆様にお知らせ致します。病院裏B駐車場、緊急車両出入り口付近に駐車中のお車は大至急ご移動お願い致します、繰り返します>
時折流れる館内アナウンスと人の騒めき。病院内の食堂はやや混雑し窓際のテーブルには2枚のトレーが並んでいた。
「あんたがA定食?」
「木蓮はB定食が良いって言ったじゃないですか」
「アジフライ美味しそうね、半分頂戴」
「じゃあ、木蓮のコロッケ半分交換して」
「ちぇーーーー」
「ちぇーーーーってどれだけ食べるつもりなの」
「悪かったわね、睡蓮みたいにか細くなくて」
「本当に」
2人が箸でそれぞれの皿に取り分けていると恰幅の良い女性が木蓮と伊月に話し掛けて来た。
「あら、叶さん」
「ーーーふぁい?」
木蓮はアジフライに齧り付きながらその顔を見上げたが見覚えはない。女性は伊月の肩をポンポンと叩くとニヤついた。
「田上先生、また泣かしちゃ駄目ですよ」
「なんの事でしょうか」
「談話室で叶さんの事、泣かしたって噂になってますよ」
「えっ、そうなの?」
「恋愛話は外でお願いしますよ!」
「恋愛話、恋愛話じゃありません!」
女性はカッカッカッと笑って奥の席に座った。
「あの人、誰」
「呼吸器内科の婦長さん」
「私と睡蓮を間違えたのね」
「そうですね」
「なに、そんなに見分けが付かない?」
「接点が少ない人には判別がつかないでしょうね」
「中身はこんなに違うのに」
「本当に」
2人は無言で箸を動かした。
「ねぇ」「あの」
2人は同時に呼び合い、木蓮は伊月に断る事なく話し始めた。
「睡蓮、なんて言ってた?病院から帰って来てからずっと部屋から出て来ないし、ご飯はお母さんが部屋まで運んでて引き籠り状態よ」
「ーーーーそうですか」
「大人気ない」
「その事なんですが」
木蓮は豆腐とわかめの味噌汁の腕を持った。
「睡蓮さんは心的外傷後ストレス障害、PTSDの様な気がします」
「なに、そのPTA」
「トラウマと言います」
「あぁ、あれね嫌なことを思い出して「ああああー!」ってなっちゃう」
「木蓮が言うと緊迫感が無いですね」
その木蓮の口からはわかめがダラリと垂れ下がっていた。伊月は「この2人が1人で半分に出来れば良いのに」とその顔を見た。
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