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「それが睡蓮の引き籠りとなにか関係があるの?」
「赤い指輪に心当たりはありますか?」
「ーーーーーああ」
それは雅樹が2度、3度と木蓮の指に嵌めた深紅のヴェネチアンガラスの指輪だ。思い当たる節があるといった表情の木蓮を前に伊月は箸を皿に置いた。
「あと、くまのぬいぐるみ」
「お父さんが買って来たティディベアね」
「ベージュと焦茶、睡蓮さんと木蓮の髪の色と同じ色ですね」
「そうね」
「木蓮がベージュのくまのぬいぐるみを選んだ事が睡蓮さんには大きなショックだった様です」
「く、くま」
「小学生だった睡蓮さんは自分を取られたと感じたのかも知れません」
「ーーーそんな」
木蓮も箸を皿に置き伊月の顔を凝視した。
「わざとじゃ無いわ」
「木蓮は悪くありません、仕方の無い事ですから」
「でも」
「睡蓮さんが少し繊細なだけです。木蓮だってご両親が睡蓮さんの入院につきっきりで寂しい思いをしたでしょう」
「ーーーうん」
「木蓮も我慢したでしょう」
あれ程婦長に釘を刺されたのに今度は木蓮が泣き始めてしまった。ただ木蓮は睡蓮のように繊細ではなく、自身で紙ナフキンを摘むと鼻をかみ始めた。
「伊月ーーーーーぃ、あんたくらいだわそう言ってくれたの」
「あ、婆ちゃんから聞いた事を言ったまでです」
「又聞きなんかーーーーい!」
「まぁ、そんな感じです」
2人は大きなため息を吐いた。
「本来ならば心療内科を受診した方が良いのですが睡蓮さんもご両親も戸惑われる事でしょう」
「そうね、いきなりPTAはないわね」
「PTSDです」
「細かいわね」
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