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すると伊月はハンドルを握りながらブッと盛大に時速120kmの勢いで失笑した。
「本気にしたんですか」
「紛らわしい!そんな真剣な顔で言われたら誰でも本気にするわよ!」
「まぁ、あながち冗談でも無い、かな?」
「なによ、その疑問形」
木蓮の眉間に皺が寄った。
「スニーカーに木工用ボンドでも、それはそれで楽しい人生ですね」
「ヤモリは勘弁だわ」
「1ctの婚約指輪を差し上げますよ」
「あ、そ」
「まぁこの話はおいおい」
「でも、あんた睡蓮の事が好きなんじゃないの」
「好きだからと言って結婚出来る訳じゃないんですよ」
「ーーーそうね」
今の木蓮にはその言葉が痛いほどよく分かった。
「木蓮が雅樹さんを諦めた頃にまたお話しましょう」
「あんたは睡蓮の事を諦めたの」
「睡蓮さんの幸せが私の幸せです」
「ーーーなに、あんた神さまかなんかなの」
「医者です」
「分かったわ、私も伊月の事は嫌いじゃないから考えておくわ」
「そうして下さい」
「そうするわ」
木蓮は右手で髪を掻き上げ、伊月はその仕草を横目で見た。
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