千夜一夜

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 雅樹は違和感を感じながらも愛撫を続けた。突起を舌先で刺激しながら中へと指を挿し込む、そこは蕾んだ花の様に開かず初めて肌を合わせた緊張感なのかと戸惑いながら指を抜き差しした。 「おまえ、緊張してねぇか」 「してないわ」 「なんか」 「黙って、やめないで」  次第に濡れ始めたが身体は強張ったままだ。 「しても良いのか」 「ーーー」 「良いのか、良いんだな」  木蓮は両手で顔を隠したまま強く何度も頷いた。雅樹はコンドームの封を切ると硬くなったそれに先端の空気を抜いたゴムを手早く被せた。木蓮の内股は閉じたままでその間に割入るにはやや力が必要だった。片手を添え膣口にあてがうと木蓮はその背中にしがみ付いた。 (ーーー!)  めりめりと体内へとめり込む雅樹は熱を帯びはち切れんばかりだった。やや違和感を感じつつもこうなると歯止めが効かない。 「くっ!」  思い切り腰を押し込むと木蓮の柔らかな中に触れた。2人が結ばれた瞬間だった。大きく脚を開かせると両膝を抑えて腰を前後させる。雅樹は恋焦がれた木蓮の中に入った悦びで無我夢中で動いた。 「木蓮、木蓮」  木蓮の耳元で熱い声が自分の名前を囁く。木蓮はその情熱を受け止め続けた。 「くっ、くっ!」  雅樹の呻き声と息遣いが激しくなり木蓮の頬に汗が雫となって垂れた。 (雅樹)  眉間に皺を寄せ唇を噛むその表情を目に焼き付けようと木蓮は雅樹の頬に触れ包み込んだ。 「くうっ!」 (ーーー痛っ!)  雅樹は木蓮の中へ根本まで押し込むと腰を震わせてコンドームの中にその思いを吐き出しその胸に倒れ込んだ。木蓮はその背中を力いっぱい抱きしめると頬に涙を流した。   「どうした」 「なんでも無い」  雅樹がそれを抜こうと木蓮の股間に目を遣った時、彼は信じられない物を見てしまった。シーツの上には赤茶色の滲みが出来ていた。 「木蓮ーーーお、おまえ」 「なに」 「だったのか」  木蓮はこの愛おしくも悲しい一夜に処女を捧げた。 「好きな人が良いって決めていたの」 「おまえ馬鹿か」 「決めていたの」  もう後戻り出来ない、雅樹はそう確信した。
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