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バナナの葉に包まれた南国料理、香辛料の効いた海産物、2人はシャンパングラスを傾けココナッツミルクのデザートに舌鼓を打った。
「ホテルのディナーも良いけれどやっぱり睡蓮さんの料理が美味しいよ」
「ーーーーもう!」
「なに、牛みたいな声出して」
「さん、さん付け呼びは結婚したら止めるって言ってたじゃない」
「ごめん」
「呼んでみて?」
雅樹は顔を赤らめ、睡蓮はカトラリーを手に首を傾げた。
「呼んでみて」
「す、すいれ」
「呼んでみて」
「睡蓮」
「やだ、恥ずかしいーーーー!」
「睡蓮さんが呼んでみてって言ったから」
「ふふ、雅樹」
「睡蓮」
キャンドルのライトを挟み向かい合う二人は微笑ましい新婚夫婦だ。頬を赤らめながらシャンパンをオーダーする睡蓮の横顔は幸せそのもの。雅樹は小さく溜息を吐いて「これで良いのかもしれない」そう思った。
「ご馳走様でした」
「美味しかったね」
薄暗がりの土塀にキャンドルの灯火が揺れ風に騒めく椰子の葉、何処からか南国の鳥の鳴き声が聞こえて来た。
「酔っちゃった」
そう呟いた睡蓮は雅樹の腕にしがみ付いた。
(ーーーそっくりだ)
斜め45度から見下ろす睡蓮は木蓮に瓜二つだ。
「なに、なーーんか付いてる?」
「睡蓮、顔が真っ赤だよ」
「えへへ、シャンパン沢山飲んじゃった」
「そうだね、いつもあんなに飲むの」
「私ぃ、お酒はあまり飲まないの」
シャンパンを何杯もオーダーした睡蓮の足元は覚束なく身体からもアルコール臭が漂って来た。ふらつく肩を支えるとそれは華奢で木蓮とは違っていた。木蓮はどちらかと言えば標準体型、程よい肉付きで柔らかかった。
(ーーー細い)
喘息を患う睡蓮は全体的に華奢で触れると壊れそうな雰囲気を醸し出していた。面立ちは同じでも体格は生活環境で異なるという事を雅樹は初めて知った。
(これなら出来るかもしれない)
雅樹は今後の性生活について不安を抱いていた。追い求める木蓮の姉に身体が反応するのか気が気では無かった。そして睡蓮は飲み慣れないアルコールに身を任せ、はじめての夜への恥じらいと緊張を解そうと懸命になっていた。
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