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雅樹がシャワーブースから出て来ると天蓋が海風にそよぐキングサイズのベットの上にキャミソール姿の睡蓮が腰掛けていた。
「睡蓮、海風は身体に障るから閉めないか」
「このままで良いですか」
「分かった」
しっとりと濡れた亜麻色の髪、伏せ目がちな黒曜石の瞳。アルコールの酔いが醒め始めた睡蓮は雅樹から目を外らせた。
「怖いなら止めておく?」
睡蓮は首を横に振った。
「ーーー続けて下さい」
睡蓮の背中に雅樹が手を添え肢体はゆっくりとマットレスに倒された。唇が近付き思わず目を閉じる。
(ーーーあ)
睡蓮は雅樹から受ける初めての口付けに身体を強張らせた。木蓮に負けたくない一心で咄嗟に雅樹の唇を奪っていた時とは違う、柔らかくしっとりと吸い付く感触。
(え、なにこれ)
やがて舌が口腔内を這い回り睡蓮は酷く戸惑った。
(なに、なにこれ!)
「あ、ごめん。初めてだった?」
「はい」
雅樹の指先は恐る恐る胸の膨らみに触れ、突起を唇で啄んだ。
「ーーーあ」
(感じては、いるのか)
然し乍ら睡蓮とのセックスは木蓮との本能に赴くままの情熱的なセックスとは異なり、まるで説明書をなぞる様な醒めたものだった。雅樹の手は睡蓮の細い足首を掴み大きく広げた。
(ーーー)
睡蓮は顔を両手で隠したまま微動だにしない。薄い茂みに指を当てがうと水から飛び跳ねた魚の様に身体を反らせた。膣口は塞がったままで広がる気配はなかった。ゆっくりと指先を押し進めると滑り気を感じる膣内へと辿り着いた。前後させる度に腰が恐怖で震えているのが分かった。
「睡蓮さん」
「ーーーは、はい」
「止めておきましょう、すごく緊張している」
「大丈夫です」
雅樹は身を起こすと睡蓮の髪の毛を撫でながら優しい声色で囁いた。
「睡蓮さんも初めてなんでしょう」
睡蓮は一瞬、聞いてはならない言葉を耳にしてしまった。雅樹は何事も無かったかのように睡蓮に掛け布団を掛けると背後から抱き締めた。呼吸はやがて寝息へと変わる。
(ーーー810号室)
睡蓮の頬に涙が伝った。
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