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その後、4日間の夜を共にしたが睡蓮と雅樹が交わる事はなく、雅樹は手足を強張らせたままの背中を抱きしめて朝を迎えた。
(睡蓮、どうしたんだろう)
雅樹は酷く困惑した。睡蓮は言葉少なで始終何かを考え込んでいる様で居心地が悪かった。それは以前2人で出掛けた白川郷へのドライブを連想させた。
「あぁ、日本の空気だね」
「そうね」
「体調が悪いの?」
「元気よ」
成田国際空港に降り立つ連絡通路に差し掛かると睡蓮は雅樹から距離を空けて歩き始め振り向きもしない。
「睡蓮、どうしたんだ」
「どうもしないわ」
「睡蓮!」
睡蓮は無言で雑踏の中を脇目も振らずに歩いて行く。ハワイへと出立した時の笑顔は消え失せその態度の豹変ぶりに戸惑った。睡蓮は雅樹に抱かれる事なく処女のまま新婚旅行を終えた。
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