運命の一夜

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 何処までも青い空、白い雲、睡蓮は大きく息を吸い込み和田家母屋のインターフォンを鳴らした。睡蓮の目の前には職務を切り上げた雅次がソファーに浅く腰掛け、震える指でカップソーサーをテーブルに置く百合の姿があった。 「ブライダルチェックを行わなかった私の不注意でした」 「そんな、ちゃんと調べたの」  睡蓮は深々と頭を下げたまま微動だにしなかった。 「うちの跡継ぎはどうなるんだ」 「申し訳ございません」 「この事は雅樹は知っているの!?」  百合の語気が強くなり、雅次がそれを制した。 「雅樹さんとは今夜話し合います」 「で、でも睡蓮さん、赤ちゃんが出来ているかもしれないでしょう?」  睡蓮は一呼吸置くと義父母を凝視した。 「雅樹さんと私はセックスレスです。一度も関係を持った事はありません」 「そんな、そんな馬鹿な」 「本当です」  百合は狼狽え、雅次は顔色を変えた。 「それで睡蓮さんは如何したいの」 「それは雅樹さんと話し合います」 「叶家との繋がりは如何なるんだ」 「叶家には私の妹が居ます」 「睡蓮さんが駄目で妹さんが雅樹のお嫁さんになるなんて、そんな馬鹿な話がありますか!」 「その点は雅樹さんからお話があると思います」  睡蓮は深々と頭を下げ席を立った。 「す、睡蓮さん!」 「申し訳ございませんでした」  白い日傘がアスファルトの上で開いた。睡蓮の身体は妊娠出産に適していない事が医師から言い渡された。
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