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頭を抱えた父は、母が生前懇意にしていた魔術師たちに片っ端から連絡を取った。
そしてヴィオレーヌが五歳になった時、師匠――アルベルダがやって来たのである。
母の友人だったと言うアルベルダは、腰の曲がったおじいちゃんだった。
大きな杖を支えにするように立っていて、今にも天に召されそうなほどよぼよぼのおじいちゃんは、ヴィオレーヌを見て目じりに皺をたたえて笑った。
「エイヴリルによく似ておるわ。顔立ちも、多すぎる力もな。これはほかの魔術師には荷が重かろうて」
エイヴリルとは亡くなった母の名だ。
聞けばアルベルダは母が幼いころに教鞭を取ったことがあるそうで、その縁でずっと懇意にしていたらしい。
ヴィオレーヌが生まれたときは他国におり、母が亡くなったことも知らなかったのだそうだ。
自分があの時にこの国にいたら、エイヴリルを救えたかもしれないと悲しそうに真っ白な眉を下げた。
「エイヴリルが全力の加護を与えた姫さんは、エイヴリル以上の魔術師になるかものぅ」
楽しみじゃのうと好々爺然として笑うアルベルダは――、けれども、蓋を開ければ鬼だった。
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