駆けつけてきた黒猫

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 年上の義弟に「義姉上」と呼ばれるのは少し落ち着かないものがある。 「あの、クラーク殿下。ヴィオレーヌと名前で呼んでいただいて大丈夫ですよ」 「そうはいかないよ。義姉上のことを名前で読んだりしたら兄上がうるさそうだからね」 「ルーファス殿下は、礼儀に厳しい方なんですか?」  とてもそうは見えないが、と首をひねると、クラークが楽しそうに笑う。 「違う違う。あーでも、勘違いしたままの方が面白そうだから、今はそう思っていていいと思うよ」  よくわからないが、肩を揺らして笑い出したクラークは、悪戯を思いついた子供のような顔になっていた。 「それはそうと、ミランダ、スチュワートは派手なことをはじめたね」 「あら、もうご存じだったんですか?」 「うん。昨日の時点でね。……城で、叔父上がオークウッド侯爵に噛みついてたからねぇ。他のようにならないといいけど」 「大丈夫です。他の紹介のように、裏から手を回して魔術師を奪い取るなんて不可能ですから」 「そう? ……なるほどね」  ちらり、とクラークの視線がヴィオレーヌに向く。
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