駆けつけてきた黒猫

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 王宮で使われている皿は、王族が使用するものなのでとても高価なものだ。皿一枚で金貨が何枚飛ぶかわかったものではない。戦後の財政難に、皿を買い替えたりする余裕はないのだから、丁寧に扱えばいいものを。 「わたくし、少し小耳にはさんだのですけど」  全員の視線が厳しいのに、アラベラはまったく気にしていないようだ。 「オークウッド侯爵家が、何やら分不相応なことをはじめたのですって?」  アラベラの視線がヴィオレーヌの後ろに控えているミランダへ向かう。 「なんでも、ポーションの製造と販売に乗り出すことにしたとか。わたくしのお父様が国のために管理しているのを知らないはずでもございませんのに、どうして戦後の大変な時に、国内を乱すようなことをなさるのか……宰相家ですのに、ずいぶんと暗愚でいらっしゃること」  昨日の今日で、アラベラの耳にも入っていたらしい。  アラベラの側には、外の情報を逐一報告する人間がいるようだ。  視線を向けられたミランダは、にこりと微笑んだ。
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