駆けつけてきた黒猫

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「戦後の大変な時に、ポーションの値段を吊り上げるような、己の利益しか考えていない愚かな方がいらっしゃるから、わたくしの兄としても動かざるを得ないのですわ」 「――なんですって?」 「お人形のように着飾っていらっしゃる方が、政治や経済のことに詳しいはずございませんものね。あら、失礼、一生懸命虎の皮をかぶっていらっしゃる羊に、わたくしったらなんてことを」 (……羊質虎皮とは、ミランダ、なかなかきついわ)  おほほほほ、と笑うミランダにヴィオレーヌは顔を引きつらせた。  アラベラも、そして彼女の後ろに控えている侍女たちの顔も恐ろしいことになっている。  顔を真っ赤に染めたアラベラが、フォークを握り締めてその先をミランダに突きつけた。 「侍女の分際で偉そうに‼」 「頭が空っぽのくせに親の威光を借りたがる方が何をおっしゃるやら」  バチバチとミランダとアラベラの間で火花が散っているように見える。  もしかしなくても、この二人は犬猿の仲なのだろうか。  ミランダの主として、ここはヴィオレーヌが諫めるべきなのかもしれないが、怖いもの見たさと言うのか、もう少し見ていたいような気もしてくる。
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