駆けつけてきた黒猫

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 止めるかどうするかと悩んでいると、ルーファスがパンと手を叩いた。 「やめないか二人とも。食事の席だぞ。喧嘩なら外でやれ」 「ですが殿下‼」 「アラベラ、何を勘違いしているのかわからないが、ポーションは別にファーバー公爵家でのみでしか製造できないという決まりがあるものではない。戦前はどこの商会もポーションを製造し販売していた。それが元に戻ろうとしているだけのことだ。そのように騒ぎ立てるようなことではないし、ましてやオークウッド侯爵家に文句を言うのはお門違いだ」  ルーファスが正論をぶつけると、アラベラは真っ赤な唇を一文字に引き結んでツンッとそっぽを向く。 「ミランダもミランダだ。お前は侍女という立場だ。喧嘩を売られたからと言って主人を無視して暴走するな。喧嘩を買うなら主人であるヴィオレーヌの許可を得てからにしろ」 (それはちょっと……)  喧嘩を買いたいたびに「喧嘩してきていいですか」と訊ねられてもヴィオレーヌが困る。  そしてヴィオレーヌも売られた喧嘩は買う主義なので、ミランダにそう訊ねられてダメとは言えない。結果を見れば同じになると思う。
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