駆けつけてきた黒猫

31/33
前へ
/280ページ
次へ
 ミランダが「申し訳ございません」と謝罪をする。  アラベラが謝るとは思えないので、あちらはみんな放置していた。  ルーファスのおかげで場が落ち着くと、こほん、と気を取り直したように国王が咳ばらいをする。 「あー、この場で何なのだが、ルーファス、来月から少し、北の砦に向かってくれないか?」 「北の砦ですか? あそこは、戦の爪痕が深い場所ですよね。何かありましたか?」 「復興の進みが遅い。北の砦の辺りは冬になれば雪に覆われるだろう? せめて冬を越す場所だけでも用意しておかなければ、今年の冬が大変なことになるんだが……、近くにマグドネル国の残党兵が住み着いているという情報がある。そのせいで、いまだに小競り合いが続いているそうだ」 「そんなことは初耳ですよ」 「私のところにも先日上がって来たんだ。どうやらマグドネル国の残党兵も、身を潜めて態勢を整えなおしていたらしいな。こちらからマグドネル国側にも苦情は入れるが、残党兵など知らないと言われるのがおちだと思っている」 「あなた……、それはつまり、ルーファスを戦地へ向かわせるということですか?」  さっと王妃ジークリンデの顔が青ざめた。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加