駆けつけてきた黒猫

32/33

127人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
 残党兵の規模はわからないが、小競り合いが続いているのならばそういう認識で間違いない。  国王が困ったように眉を下げた。 「戦後で人手も足りないなか、北の砦に大勢の兵士や騎士を向かわせるには、それなりの建前が必要だ。王太子が動くという建前があった方が、動かしやすい」  復興にあたっている騎士や兵士を移動させるということは、現在彼らが復興に携わっている場所が放置されるということだ。計画の見直しも必要だろう。何か理由がなければ動かしにくい。  残党兵の規模や詳細がわかってからならば騎士たちを動かすのも容易だろうが、その調査がされる前に動かしたいとなると、どうやら状況は芳しくないようだ。悠長に構えていたら、砦を落とされる危険もあるのかもしれない。 「わかりました」 「ルーファス!」  王妃が悲鳴のような声を上げた。  やっと戦争が終わったと思ったのに、また息子が危険な場所へ向かうとなると、母親としては血の気の退く思いだろう。  ルーファスは顎に手を当てて少し考えるそぶりをしてから、ヴィオレーヌに視線を向けた。 「ヴィオレーヌも連れて行きますが、構いませんか?」
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加