北へ

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 北の砦へは、一週間後に王宮を出発することになったので、ヴィオレーヌはその一週間、ポーション作りに励んでいた。  ポーションの販売をはじめると言った矢先に在庫切れを起こすのは避けたいと、ミランダに泣きつかれ、留守にしている間に製造できなくても問題ないだけの在庫を用意する羽目になったのだ。  長期間戻って来られなくなることも想定し、師匠であるアルベルダにも手伝わせて、ヴィオレーヌは一週間で延べ二千個のポーションを作り上げた。  それと並行して旅支度も整える。  王都から北の砦までは、片道馬車で二か月もかかるというのだ。  北の砦はルウェルハスト国の最北端に位置する場所だが、それでも王都から二か月とは。モルディア国は、国の端から端まで移動しても馬車で一週間もあればたどり着くことができるような広さだった。大国の国土の広さには恐ろしいものである。  ヴィオレーヌを最東のエインズワース辺境伯城に迎えに来て、一か月も経たずにまた北へ向かうとは、ルーファスも忙しい立場だ。  けれどもルーファスは、王宮にいるよりは外にいた方が気が楽だと、むしろ機嫌がいいくらいだった。
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