北へ

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 美味しいご飯を食べてごろごろする生活を送るのだというアルベルダに、ヴィオレーヌはあきれ顔で息を吐いた。すっかり飼い猫生活を満喫している。数年前に自由を求めて旅に出た孤高の魔術師はどこに消えたのか。 「それに、わしは役に立つぞぃ」 「師匠が役に立つのはわかっていますけど、その姿で当たり前のように人語をしゃべって魔術を使ったら怖がられますから、普段はちゃんと猫をしていてくださいね」 「わかっておるわ」  言いながら、前足で顔を洗う動作をする。これはアルベルダの中の猫らしい動作の一つらしい。  仕方がないので、アルベルダが最近愛用しているクッション――部屋の中で一番気にいったのを我が物顔で分捕ったともいう――を大きな籠の中に入れ、アルベルダ専用のベッドを作ると、これも旅の荷物に入れておく。  荷物の確認を終えると、ジョージーナとルーシャが手分けをしながら玄関前に停められている馬車に運び込んでくれた。  出立は本日の昼過ぎだ。  マグドネル軍の残党兵がいるという情報があるにもかかわらず、多くの騎士や兵たちが自ら同行を志願したと聞く。
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