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やり直し王女、夫の生殺与奪の権利を握る
モルディア国第一王女ヴィオレーヌは、一度、死んだことがある。
感覚的には十八年前――、正しくは『本日』、ヴィオレーヌは夫となるルウェルハスト国王太子ルーファスの指示で殺害された。
先ほどの、渓谷で襲われたときである。
あのときのヴィオレーヌは弱い女だった。
マグドネル国の王女のかわりに嫁ぐことになり、不安でいっぱいになりながらルウェルハスト国までの道のりを馬車の中で震えながら、夫となるルーファスはどのような人物なのだろうかと考えた。
嫁ぎ先が敵国だった国だ。
ヴィオレーヌが歓迎されるとは思えない。
扱いは粗雑なものになるだろうし、夫から大切にされるとも思えなかった。
人質同然の扱いであるヴィオレーヌのこの先の人生は厳しいものになるだろう。
すでに側妃を二人娶っているルーファスがヴィオレーヌに関心を示すことはないだろうが、少しでもいいから仲良くなれないだろうか。
周囲をマグドネル国の人間で固められたヴィオレーヌには味方は一人もいない。
ルウェルハスト国で頼れるのは、夫であるルーファスただ一人なのだ。
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