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玄関前で馬車に積んだ荷物の最終チェックをしていると、見送りのために王妃ジークリンデが顔を出した。少し遅れてリアーナもやって来る。
ジークリンデとリアーナと話していると、中から「殿下、わたくし心配ですわ」とやけに大きな声が響いてきた。
玄関ホールを覗き込めば、こちらへ向かって来ようとしているルーファスの腕にまとわりついているアラベラが見えた。
「殿下が行かれる必要はないのではなくて? 聖女なんてもてはやされている方がいらっしゃるんですもの、あの方が一人で行けばいいではありませんか。ねえ?」
「陛下は俺に行くようにお命じになったんだ。俺が行かないでいいはずないだろう」
「あら、陛下にはわたくしが言って差し上げますわ。わたくしがお願いすれば陛下も考え直してくださるはずですもの」
(すごい自信ね)
まるで国王を意のままに操れるとでも言いたげな言葉に、ジークリンデが少しだけ眉を寄せたのがわかった。けれど、アラベラを諫めるようなことはしない。本来であれば王妃の方が王太子の側妃より立場は上のはずなのだが、難しいところがあるのだろう。
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