北へ

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 ルーファスも苛立っているようだが、まとわりつくアラベラを突き離せないでいる。  王弟で、大きな派閥の長であり、さらにポーション事業を独占しているファーバー公爵家の娘を邪険に扱うわけにはいかないのだ。 (ポーション事業がファーバー公爵の独占でなくなれば、多少状況も変わるんでしょうけど)  スチュワートが頑張っているが、すぐにどうこうできる問題でもない。  せめてヴィオレーヌが敗戦国でも何でもない大国の姫であったなら多少は違っただろうが、残念ながら敗戦国の、しかも小国の王女である。個人的にやり返すことはできても、ファーバー公爵家そのものの頭を抑えつけられるような権力は持たない。  アラベラにまとわりつかれながら玄関前に到着したルーファスが、いい加減離してくれとアラベラの腕を軽く叩く。  しかしアラベラはルーファスの腕にまとわりついたままヴィオレーヌを見て、ふふん、と笑った。  その仕草がなんとなくカチンと来たので、ヴィオレーヌはにっこりと微笑んで言ってやる。
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