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「アラベラ様もご一緒に北へ向かわれますの? 残党兵と小競り合いが続いている場所ですもの、人では多い方がよろしいものね。ケガ人のお世話とかお仕事はたくさんあるでしょうから。一緒に来てくださるなら助かりますわ。ねえ、殿下?」
すると、アラベラは表情を変えてルーファスの腕からパッと手を離した。
「な、何をおっしゃるのかしら? わたくしは王太子殿下の側妃ですもの、行けるはずがありませんわ」
「わたしは正妃ですけど」
「あなたのような人質同然の正妃と一緒にしないで‼ わたくしのお父様は王弟ですのよ! つまり、わたくしは王女同然なのです‼」
王弟の娘が王女同然なはずはないのだが、アラベラは昔からそう言われて育ったのだろうか。
自分の方が人質同然の妃より立場が上だと宣うアラベラの発言は、ヴィオレーヌだけでなくジークリンデをも攻撃する言葉だ。
ジークリンデは何も言わないが、思うところは大きいだろう。
そして、そんなジークリンデを母に持つルーファスにも、嫌悪を抱かせることはあっても、好意的に受け取られることはない言葉だ。
(頭の弱い方)
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