北へ

12/29
前へ
/280ページ
次へ
「アラベラ様もご一緒に北へ向かわれますの? 残党兵と小競り合いが続いている場所ですもの、人では多い方がよろしいものね。ケガ人のお世話とかお仕事はたくさんあるでしょうから。一緒に来てくださるなら助かりますわ。ねえ、殿下?」  すると、アラベラは表情を変えてルーファスの腕からパッと手を離した。 「な、何をおっしゃるのかしら? わたくしは王太子殿下の側妃ですもの、行けるはずがありませんわ」 「わたしは正妃ですけど」 「あなたのような人質同然の正妃と一緒にしないで‼ わたくしのお父様は王弟ですのよ! つまり、わたくしは王女同然なのです‼」  王弟の娘が王女同然なはずはないのだが、アラベラは昔からそう言われて育ったのだろうか。  自分の方が人質同然の妃より立場が上だと宣うアラベラの発言は、ヴィオレーヌだけでなくジークリンデをも攻撃する言葉だ。  ジークリンデは何も言わないが、思うところは大きいだろう。  そして、そんなジークリンデを母に持つルーファスにも、嫌悪を抱かせることはあっても、好意的に受け取られることはない言葉だ。 (頭の弱い方)
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加