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自分が王女同然の公爵家の娘だというのならば、学ばなければならないことも多かっただろうに、なんて残念な女性だろう。
身分の高い人間は、着飾って他者を攻撃して回るのが正解だとでも思っているのだろうか。
「母上、留守を頼みます」
「ええ――」
「お任せくださいませ、わたくしがしっかり留守を守りますわ‼」
ジークリンデの言葉を遮って、アラベラがホホホ、と笑う。
ルーファスはそれには答えず、さっさと馬車に乗り込んでしまった。
この場に長居したくないのだろうと受け取って、ヴィオレーヌもジークリンデに向き直る。
「それではお義母様、行ってまいります」
「ええ。嫁いで来たばかりだというのに、すぐにお仕事をお願いしてごめんなさいね」
「構いません」
にこりとジークリンデに微笑んだ後でリアーナに視線を向けると、彼女が大きく頷いてくれた。リアーナがジークリンデについていてくれるので安心だ。少なくとも彼女は、ジークリンデを軽んじたりはしない。
ルーファスの待つ馬車に乗り込むと、外から騎士団長の号令が上がって、馬車がゆっくりと動き出す。
帰るころには冬だろうか。それとも春だろうか。
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