北へ

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 王都を出発して翌日の夜。  ルーファスはふと、夜中に目を覚ました。  隣からは、ヴィオレーヌのすーすーと規則正しい寝息が聞こえてくる。  しばらくは宿を取りながらの移動だが、この先は天幕で夜を明かすことも多くなるだろう。  宿でも天幕でもヴィオレーヌと同じ寝床を使うことになる。  王宮で最初にヴィオレーヌの部屋で夜を明かした日こそ緊張していたようだが、あの日以降は普通に眠りについているようだ。ルーファスが何もしないとわかったからだろう。 (まあ、今から長距離を移動するというのに、妊娠させたりしたら計画が狂うからな)  ヴィオレーヌは賢い女だ。そのくらいは予想しているようで、ルーファスが手を出すはずがないと高をくくっている節がある。  それがちょっと面白くないと思うのは何故だろう。  ベッドの上に広がっている彼女の紫がかった銀髪に触れる。  しっとりと上質の絹のように手触りのいい髪を、なんとなく指に巻き付けてみた。  出会った初日にルーファスに剣を突きつけ心臓を縛った苛烈さからは思いもよらないほど、ヴィオレーヌの寝顔は静かだ。
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